仏壇といえば「亡くなった人をまつるところ」と考えている方が 多いのですが、
実はこれは誤りなのです。
「位牌壇」といわずに「仏壇」とよぶことからも明らかなように、
本来は、ほとけ様をおまつりし、ほとけ様にお供え物を供えるための壇です。
また、もともと仏壇は、お寺のお堂にある須弥壇(※1)のことなのですが、
現在では、一般家庭に置かれる箱型の厨子(※2)のことをさします。
一般の人々の家に仏壇が置かれるようになったのは、
「日本書紀」にさかのぼります。
白鳳14年(西暦685年)に天武天皇が
「諸国の家毎に仏舎を作り、仏像と経を置きて礼拝供養せよ」
と詔し全国に広まっていきました。
ただ、ここでいう「家」というのは、三位以上の位のある者や
地方の豪族をさすもので、実際に奈良~平安時代にかけては、
有力な貴族や豪族の間で、
持仏堂や仏間の建立が流行しました。 (平等院鳳凰堂など)
一般庶民が各家に仏壇を置くようになったのは、江戸時代です。
江戸幕府の政策「檀家制度」「仏壇改め」によって
各家に仏壇が置かれることになりました。
また、一家や一族という価値観からくる『祖霊信仰』があったことが、
仏壇が広く一般庶民に受け入れられることの基礎になっており、
そのため一般の家庭にある仏壇には、必ずといってよいほど、
ご先祖のお位牌がまつられている現在の形になりました。
つまり、仏壇の中にいらっしゃるご本尊のわきにお位牌を置くのは、
ほとけ様のおそばで、ほとけ様にまもっていただこう
という気持ちからであり、そして今では、
亡き人を偲び ご先祖様からの命の繋がりを感謝することが、
お仏壇をお祀りする大きな理由となりました。
※1須弥壇:仏教の宇宙観に由来します。
世界の中心に「須弥山」という山があり、
我々人間の住んでいるところは須弥山の まわりにある
八重の海の一番外側の海の南方島(閻浮提洲)だそうです。
世界の中心の神聖な場所であり、
ほとけ様がおられる場所「須弥山」になぞられ、
お寺のお堂の正面にある壇を須弥壇とよびます。
※2厨子:仏像、仏画、舎利、経典などを安置するいれもの。