はじめに:次の世代へ、想いと歴史を繋ぐために
「古くなった仏壇を買い替えたいが、何から手をつければいいのか分からない」
「家の建て替えを機に、リビングに合う仏壇にしたいけれど、ご先祖様に失礼にならないか心配」
そのようなお悩みを抱えていませんか?仏壇は、家具や家電のように数年で買い替えるものではありません。30年、50年、あるいは100年と、親から子へ、子から孫へと受け継がれていく大切な「祈りの場」です。だからこそ、絶対に失敗したくないというプレッシャーを感じるのは当然のことです。
特に、格式ある和風のお仏壇から、現代のライフスタイルに合わせた仏壇への買い替えを検討される際、「安っぽいものにはしたくない」「家の格に見合う本物が欲しい」と願うのは、ご先祖様を大切に想うからこその悩みでしょう。
この記事では、創業70年続く仏壇店・仏師三代目である私が、「後悔しない仏壇の買い替え」について、プロの視点から分かりやすく徹底解説します。ぜひブックマークして、ご家族で話し合う際にご活用ください。
仏壇の買い替え(リプレイス)とは?
仏壇の買い替えの定義
仏壇の買い替えとは、引越し、家の建て替え、仏壇の劣化などをきっかけに、古い仏壇を供養して処分し、新しい住環境やライフスタイルに合わせた新しい仏壇を購入・設置する一連の流れを指します。
ここで重要になるのが、「礼拝物」と「礼拝対象物」の違いです。
- 礼拝物(れいはいぶつ): 仏壇、仏具、経机など、祈りの場を構成する道具。これらは処分の際に「供養」を行います。
- 礼拝対象物(れいはいたいしょうぶつ): 仏像、掛軸、位牌、過去帳など、私たちが直接手を合わせる対象。これらは基本的に新しい仏壇へ引き継ぎます。
仏壇の買い替えは単なる「家具の交換」ではなく、ご先祖様である「礼拝対象物」のお住まいを新しく整え、家族の歴史と想いを再構築する大切な儀式です。
なぜ今、買い替えが増えているのか
近年、核家族化や住宅事情の変化により、伝統的な和室が減少し、家族が集まるリビングで供養したいというニーズが高まっています。しかし、古い和風の仏壇をそのまま洋風のリビングに置くと、インテリアから浮いてしまい、結果として家族が仏壇から遠ざかってしまうという問題が起きています。
私たちは、お客様の暮らしや生活スタイルにマッチし、ご先祖様と自然に寄り添い共存できる仏壇と出逢っていただくことを使命としています 。
ステップ1:現状の把握とプロによる診断
買い替えで最も重要なのは、「いきなり仏壇店に行って、展示されているものを買う」ことではありません。まずは、「どこに置くか」「今ある大切な仏様をどうお祀りするか」を専門家と共に考えることから始まります。
自宅に専門家を招く重要性
カタログや店舗で見る仏壇と、実際に家に置いた時の仏壇では、サイズ感や色の見え方が全く異なります。「お店で見たときは丁度いいと思ったのに、部屋に置いたら小さすぎた(あるいは大きすぎた)」という失敗は後を絶ちません。
後悔しないためには、仏壇店の専門スタッフ(できれば仏事コーディネーター)を自宅に招き、設置場所と礼拝対象物を見てもらうことを強くお勧めします。
専門家が見るポイントは以下の3点です。
1. 「礼拝対象物」の詳細な採寸
ここが最も重要で、見落としがちなポイントです。長年手を合わせてきた仏像、掛軸、位牌、過去帳といった「礼拝対象物」は、ご家族にとって代えがたい大切な存在です。できる限り買い替えずに、そのまま新しい仏壇でもお祀りし続けていただきたいものです。
しかし、新しい仏壇(特にコンパクトな上置き型や家具調仏壇)にしようとした際、今までのお位牌などが大きすぎて入らないことがあります。
専門家であれば、これらをミリ単位で採寸し、「このお位牌と仏像が一番きれいに納まる仏壇」を探し出すことができます。また、もし既製品でサイズが合わなくても、「仏壇の内部の棚を調整する(セミオーダー)」ことで、大切な仏様を買い替えることなく、美しくお祀りできる可能性があります 。
2. 生活動線とインテリアの確認
家族が自然と手を合わせられる場所か(リビングなど)、壁紙の色や他の家具の高さ・素材との相性が良いかを確認します 。
3. 設置場所の正確な採寸
梁(はり)やコンセントの位置、扉を開いた際に必要なスペースなどを正確に測ります 。
もし自宅に招くことに抵抗がある場合は、設置予定場所の採寸と写真だけでなく、今ある仏像やお位牌の高さ・幅・奥行きを正確に測って持参することが不可欠です。
ステップ2:新しい仏壇のスタイルを決める
「新品を買う」だけが買い替えではありません。特に歴史あるお家柄や、想いを大切にしたい場合、以下の2つの選択肢も検討することをお勧めします。
1. 高級モダン仏壇への「新調」
現代の住宅事情に合わせて、デザインやサイズを一新する方法です。
- メリット: リビングや洋室に馴染むデザインが選べる。サイズダウンが可能。
- 選び方のポイント:
- 素材: ウォールナットやタモなど、家具に使われる銘木を選ぶと調和しやすい。
- 塗料、芯材、接着剤: 大切なのは種類ではなく品質です。お仏壇に使う塗料・芯材・接着剤などにはホルムアルデヒド発散速度に応じてF★ ~ F★★★★でJIS・JASで定められる基準があり、当社の国産仏壇では最高ランクの「F★★★★(フォースター)」の規格に全て遵守しております。
2. 想いを受け継ぐ「セミオーダー・リメイク」
「今の仏壇は大きすぎて置けないが、ご先祖様が大切にしてきた仏壇の思い出も残したい」
「新しい安置場所が作り付け家具の中なので、既製品ではサイズが合わない」
そうしたお悩みには、セミオーダーやリメイクが最適です。
- 作り付け家具への埋め込み: 新しい安置場所(シェルフやクローゼット内)に合わせて、扉無しの仏壇をセミオーダーで作る。
- 内部のカスタマイズ: 今まで大切にしてきたご本尊やお位牌が整然と収まるように、内部の段差や寸法を調整する 。
- 部材の再利用: 古い仏壇の扉の一部、家紋、小さな彫刻などを、新しい仏壇の一部に組み込むことで、歴史を引き継ぐ。
注意: ネット通販などで見られる「何でも自由に作れます」というフルオーダーの中には、伝統的な仏壇の良さを損なう提案も散見されます。私たちは、お客様の家の建て替えやリフォームといった環境変化に合わせ、「仏様のお家も綺麗にして、新しい部屋に合うものにする」という視点でのセミオーダーを推奨しています。
ステップ3:品質の見極め(国産 vs 外国産)
長く受け継ぐ仏壇だからこそ、「品質」には妥協すべきではありません。見た目は同じようでも、中身(芯材や乾燥技術)には雲泥の差があります。専門家として、チェックすべきポイントを解説します。
Q. 国産と外国産、何が一番違うのですか?
A. 木の「乾燥技術」と「芯材の品質」が決定的に違います。
1. 木の水分量と乾燥
日本の気候は湿度の変化が激しく、木は伸び縮みします。
- 国産: 1年以上かけて自然乾燥させ、さらに乾燥機で水分量を13%(日本の気候に最適)に調整します 。
- 外国産: 自然乾燥を省略し、強制的に乾燥させることが多いため、日本で使用すると反りや割れが生じるリスクが高くなります 。
2. 芯材(MDF)の質
見えない部分ですが、仏壇の骨格となる重要な要素です。
- 国産: 厳しい品質基準をクリアした高密度なMDFを使用。木ネジの保持力が強く、湿気にも強い 。
- 外国産: 品質のバラつきがあり、湿気を吸って膨張したり、ネジが効かなくなったりすることがあります 。
3. 塗料、芯材、接着剤の安全性
ご家族の健康を守るため、見えない部分の化学物質にも注意が必要です。
- 国産: 当社の扱う国産仏壇は、JIS・JAS規格の最高ランクである「F★★★★(フォースター)」を遵守した塗料・芯材・接着剤を使用しています。シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの発散を極限まで抑えた、人にも環境にも優しい仕様です。
- 外国産: 国によって基準が異なるため、日本国内の厳しい安全基準を満たしていない材料が使われている場合があります。
「5年、10年で買い換えるもの」ではないからこそ、修理が可能で耐久性が高く、そして家族の健康にも配慮された国産の製品を選ぶことが、結果として安物買いの銭失いを防ぎます 。
ステップ4:古い仏壇の処分
新しい仏壇が決まったら、今までお世話になった古い仏壇とお別れする準備が必要です。
- 「礼拝対象物」の取り出し: 仏像、位牌、掛軸、過去帳などは、新しい仏壇へ移すために丁寧に取り出します。
- 古い仏壇の供養と処分: 仏壇、仏具、経机といった「礼拝物」は、長年の感謝を込めて供養を行います。その後、仏壇店に引き取ってもらい、適切にお焚き上げ(焼却処分)や廃棄処理を依頼します。
当店では、古い仏壇の引き取りから供養の手配までワンストップでサポートしています。
ポイント:
もし、仏像やお位牌といった「礼拝対象物」も一緒に処分(お焚き上げ)される場合は、お寺様による「閉眼供養(魂抜き)」が必要になります。しかし、買い替えの場合はこれらを引き継ぐことが一般的ですので、その場合は仏壇への感謝の供養のみを行う形となります。
ステップ5:新しい仏壇の設置
新しい仏壇が届いたら、そろぞれを正しい位置にお祀りします。
- 設置: 専門スタッフが慎重に搬入・設置します。
- 仏具と礼拝対象物の飾り付け: 今まで大切にしてきたご本尊やお位牌を、新しい仏壇へお迎えします。また、花立や香炉などの仏具を正しい位置に配置します 。
- 開眼供養(魂入れ)について:
新しい仏壇を購入した際、「開眼供養(魂入れ)でお坊さんを呼ぶべきか?」と悩まれる方が多くいらっしゃいます。
実は、仏像やお位牌といった「礼拝対象物」をそのまま引き継ぐ場合、お坊さんを呼ばない方も多くいらっしゃいます。なぜなら、礼拝対象物には既に魂が入っていると考えられており、お住まい(仏壇)が新しくなったからといって、改めて魂を入れ直す必要はないという考え方が一般的だからです。
もちろん、ご宗派や地域、または「心機一転、丁寧に行いたい」というお気持ちでお坊さんをお呼びすることも素晴らしいことです。ご家族のお気持ちに合わせて判断されると良いでしょう。
専門家が答える!仏壇買い替えの「よくある質問」
お客様からよく寄せられる疑問について、明確にお答えします。
Q. 仏壇の買い替えに良い時期・タイミングはありますか?
A. 法要のタイミングや、家の新築・リフォーム時が最適です。具体的には、四十九日、一周忌、三回忌などの法要に合わせて買い替える方が多いです。また、家の建て替えやリフォームの設計段階から相談いただくと、仏壇を置くスペース(仏間や収納)を完璧に計算して作れるため、最も美しく納まります 。
Q. 浄土真宗ですが、金仏壇でなくても良いのでしょうか?
A. 基本は金仏壇ですが、現代ではライフスタイルに合わせて柔軟に選ばれています。伝統と格式を重んじる場合、本金箔・本漆を使った「本物の金仏壇」をお勧めします。一方で、モダンなリビングに置くために、内部に金箔を施したモダン仏壇を選ばれる方も増えています。宗派の祀り方を大切にしながら、どの程度「省略」や「調和」を図るか、専門家と相談することをお勧めします 。
Q. 仏壇はリビングに置いても良いのですか?
A. はい、むしろリビングをお勧めします。仏壇は「置くもの」ではなく「共に日常生活を送るもの」です。家族が集まるリビングなら、ご飯のお供えや水の交換もしやすく、自然に感謝の心を育むことができます 。孤独な部屋に追いやるのではなく、生活の中心に置くことが、一番の供養になります。
信頼できる仏壇店を見極める3つのチェックリスト
仏壇選びは「店選び」でもあります。以下の基準で選ぶと失敗しません。
- 「売る」ことより「聞く」ことを重視しているか
カタログや展示品をただ勧めるのではなく、お客様の生活スタイル、部屋の雰囲気、祀りたいお位牌の数などをしっかりとヒアリングしてくれる店を選びましょう 。 - 自宅への訪問(または詳細な図面・採寸確認)をしてくれるか
部屋や礼拝対象物を見ずに「これで大丈夫です」と言う店は不安です。プロは現場(部屋)と対象物を見て初めて責任ある提案ができます 。 - アフターサービスが明確か
「修理はできません」「メーカーに聞いてください」という店では、数十年のお付き合いはできません。自社で修理対応の知識があるか、職人との繋がりがあるかを確認しましょう 。
おわりに:迷ったら、まずは専門家を家に呼んでください
仏壇の買い替えは、単に家具を入れ替える作業ではありません。亡くなった大切なご家族、そしてご先祖様と、これからも一緒に暮らしていくための「新しい家」を用意することです。
「ネット通販でサイズだけ見て買ったら、お位牌が入らなかった」
「安さを優先したら、数年で扉が壊れてしまった」
そのような後悔をしてほしくありません。
30年、50年、さらに次の世代まで受け継いでいく長いお付き合いになるお仏壇です 。
もし、神奈川県(川崎市・横浜市・鎌倉市)近郊にお住まいで、仏壇の買い替えをご検討中であれば、まずは私たち新川崎雲山堂にご相談ください。
私たちは、いきなりショールームに来ていただくよりも、まずはお客様のご自宅(設置予定の場所と今ある仏壇)を拝見させていただくことを大切にしています。
お客様の暮らし、インテリア、そして「大切な礼拝対象物をどうお祀りしたいか」を五感で感じ取り、プロの視点から最適なご提案をさせていただきます。
【出張相談(実質無料)】あなたの家に最適な祈りの空間をご提案します
ご自宅のリビングや設置予定場所を専門スタッフが拝見し、礼拝対象物の正確な採寸からインテリアとのコーディネート、古い仏壇の処分のご相談まで、トータルでアドバイスいたします。
※出張費用について
ご相談の際に一度出張費用を頂戴いたしますが、ご注文となった場合は頂いた出張費用分を代金からお値引きいたしますので、お客様の実質負担は無料となります。「まずはプロに見てほしい」という方は、ぜひお気軽にお申し込みください。
この記事の監修者
株式会社 新川崎雲山堂 体表取締役 青地 直樹

役職: 代表取締役 / 仏師三代目
経歴:
昭和24年創業の仏壇店「雲山堂」をルーツに持つ「新川崎雲山堂」の三代目。祖父、父の背中を見て育ち、幼い頃から仏壇・仏具に触れる。大学では建築学を専攻し、住宅デザインや動線計画を学ぶ。卒業後、家業を継ぎ、仏壇業一筋の道を歩む。経営者として悩んだ経験から「お客様の心に寄り添う」ことを経営理念の中心に据え、日々お客様と向き合っている。
保有資格:
- 二級建築士
- 仏事コーディネーター
お客様へのメッセージ:
「お仏壇は、特別なものではなく、日常生活の中に溶け込み、故人と共に暮らすための大切な場所です。私たちは、お客様が心から安らぎ、自然と手を合わせたくなるような、世界に一つだけの祈りの空間を創るお手伝いをさせていただきます。どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。
免責事項:本記事の情報は執筆時点のものです。商品・サービスの仕様や価格、法要の慣習は地域や宗派によって異なる場合があります。





