実家の仏壇が汚い…「クリーニング」と「完全修復」どっちを選ぶべき?プロが判断基準を解説

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実家の仏壇が汚い…「クリーニング」と「完全修復」どっちを選ぶべき?プロが判断基準を解説

「実家に帰省したら、仏壇の金箔が剥がれて黒ずんでいた」
「扉が傾いていて、きちんと閉まらない」
「建て替えを機に仏壇をきれいにしたいが、新品を買うべきか直すべきかわからない」

実家のお仏壇を前にして、このようなお悩みを抱えていませんか?
ご先祖様や亡きご家族が眠る大切なお仏壇。きれいにしたいという思いはあっても、「掃除(クリーニング)」で済むのか、それとも本格的な「修復(お洗濯)」が必要なのか、その判断基準は一般の方には非常に分かりにくいものです。

また、インターネットで検索すると「格安クリーニング」から「伝統工芸士による修復」まで様々な情報が溢れており、選択を誤ると「せっかくお金をかけたのに数年でまた壊れた」という後悔につながりかねません。

この記事では、創業70年続く仏壇店の三代目であり、二級建築士の資格も持つ「新川崎雲山堂」の代表・青地直樹が、「クリーニング」と「完全修復」の決定的な違いと、後悔しないための判断基準を、プロの視点で徹底解説します。


1. 【結論】まずは言葉の定義を知ろう

仏壇をきれいにする方法は、大きく分けて2つあります。業者によって呼び方が異なることが混乱の原因ですが、プロの世界では明確に区別されています。

ここでは、誤解を招かないように用語を定義します。

「仏壇クリーニング(洗浄)」とは?

  • 定義: 仏壇を分解せず(あるいは部分的な取り外しのみで)、専用の薬剤や泡を使って表面の汚れ(煤や油脂)を洗い落とす方法。
  • 目的: 見た目の「汚れ」を落とし、一時的に輝きを取り戻すこと。
  • メリット: 費用が比較的安く、工期が短い(数日〜数週間)。
  • デメリット: 木地の傷みや構造的なガタつきは直らない。金箔の剥がれや漆の割れは根本解決しない。

「仏壇の完全修復(お洗濯・洗い)」とは?

  • 定義: 仏壇を完全に解体し、木地の補修、塗装の塗り直し、金箔の押し直し、金具のメッキ直しなどを行い、新品同様の状態(あるいはそれ以上)に再生する方法。
  • 目的: 仏壇の寿命を延ばし、今後50年、100年と子孫へ受け継ぐために構造から直すこと。
  • メリット: 新品のような美しさが蘇るだけでなく、強度が回復する。
  • デメリット: 費用が高額になり、工期が長い(2ヶ月〜4ヶ月程度)。

ポイント:
車で例えるなら、「クリーニング」は「洗車とワックスがけ」、「完全修復」は「エンジンのオーバーホールと全塗装(レストア)」です。見た目だけをきれいにするか、機能と寿命を取り戻すかが決定的な違いです。


2. なぜ「見えない部分」が重要なのか?新川崎雲山堂のこだわり

多くの安価な業者が提案する「解体しない修繕(クリーニング)」を、当店(新川崎雲山堂)では基本的におすすめしていません。その理由は、お仏壇の寿命は「見えない部分」で決まるからです。

「根はみえねんだなぁ」の精神

書家の相田みつをさんの言葉に、次のようなものがあります。

「花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 根はみえねんだなぁ」

お仏壇の修繕において、お客様が気にする「汚れ」や「金箔の剥げ」は、いわば「花」や「枝」の部分です。しかし、そのような目に見える不具合が起きている時、内部(幹や根)ではそれ以上の深刻な問題が進行しているケースがほとんどです。

  • 木地の痩せ: 湿気や乾燥により木が収縮し、接合部が緩んでいる。
  • くさびの緩み: 部品同士を繋ぐ「くさび」が効かなくなり、地震で倒壊するリスクがある。
  • 虫食い・腐食: 見えない裏側で劣化が進んでいる。

これらを放置したまま表面だけきれいにしても、数年後には必ずまた不具合が出ます。
当店がお預かりしたお仏壇を職人の元で丁寧に解体するのは、この「根っこ」の部分をケアし、大切なご先祖様がこれからも50年、100年と安心して過ごせる場所を守るためなのです。


3. あなたの仏壇はどっち?プロが教える3つの判断基準

では、ご自宅のお仏壇は「クリーニング」で良いのか、「修復」が必要なのか。以下の3つのチェックポイントで判断してみてください。

判断基準①:お仏壇の「購入時期」と「経過年数」

  • 購入から10年〜20年未満:
  • 大きな破損がなければ、「クリーニング」で十分なケースが多いです。表面の煤(すす)や埃を落とすだけで見違えるようになります。
  • 購入から30年以上経過:
  • 木地の乾燥や漆の劣化が進んでいる可能性が高いです。「完全修復」を検討すべき時期です。特に、祖父母の代から受け継いでいるような場合は、分解して内部を確認することを強く推奨します。

判断基準②:具体的な「破損」の症状

以下のような症状がある場合は、表面的なクリーニングでは対応できません。専門家による修理が必要です。

  • 扉の開閉不良: 蝶番(ちょうつがい)の歪みや、建物自体の歪みではなく「仏壇そのもの」が歪んでいる場合。
  • 木地の不具合: 角の接合のゆるみや割れがある。
  • 塗料の劣化: 白く曇ったり、変色がみられる。
  • 金箔の剥がれ・粉吹き: 触ると金粉が手につく、黒い下地が見えている状態。
  • 漆(または塗装)のひび割れ: 亀甲状の割れや、欠けがある。
  • 部品の欠損: 彫刻の一部が折れている、金具が取れている。

判断基準③:今後の「継承」に対する想い

これが最も重要な基準です。

  • 「とりあえず今の代だけきれいに保ちたい」:予算を抑えた「クリーニング」や部分修理が選択肢に入ります。
  • 「子や孫の代まで大切に残したい」「先祖代々の位牌を守り続けたい」:迷わず「完全修復」を選んでください。一度完全にリセットすることで、新品購入時と同じように、そこから数十年単位で寿命を延ばすことができます。

4. 知られざる「完全修復」の世界:7人の職人が織りなす技

「完全修復」は、単に色を塗り直す作業ではありません。お仏壇は「日本の伝統工芸の集合体」です。新川崎雲山堂では、それぞれの工程を専門の職人が担当する分業制をとっています。

これを私たちは「七職(しちしょく)」と呼んでいます。

お仏壇を蘇らせる「七職」の役割

  1. 木地師(きじし):
    • 修復の要です。お仏壇の解体を行い、歪んだ木地を削り直し、欠けた部分を補修します。そして、最終的な「組み立て」も木地師の仕事です。最も構造に精通している職人が最初と最後を担当することで、堅牢な仏壇に仕上がります。
  2. 宮殿師(くうでんし):
    • 仏壇内部の「宮殿(屋根や柱、桝組みなどの細かい細工部分)」の修復を専門とします。
  3. 彫刻師(ちょうこくし):
    • 欄間(らんま)や障子の腰板などに施された繊細な彫刻を修復します。欠損している場合は、同じ木材を使って新たに彫り足します。
  4. 塗師(ぬし):
    • 下地塗り、中塗り、上塗りと何度も塗装を重ね、研ぎ出しを行います。
    • 【プロの補足】:金仏壇の「塗り」は必ずしも「本漆(ほんうるし)」だけではありません。予算や耐久性に応じて、ピアノ塗装に使われる高級な「ウレタン塗り」や、神社仏閣で使われる「カシュー塗り」も使用します。当店では、漆風呂(漆を乾燥させる部屋)が必要な本漆だけでなく、現代の環境に適した最適な塗装方法をご提案します。
  5. 金箔押師(きんぱくおしし):
    • 塗り上がった表面に、薄さ1万分の1ミリの金箔を一枚一枚丁寧に押していきます(貼り付けます)。光沢あり(艶出し)や光沢なし(消し粉)など、技法を使い分けます。
  6. 蒔絵師(まきえし):
    • 引き出しや扉の裏などに、金粉や色粉で絵柄を描きます。
  7. 飾り金具師(かざりかなぐし):
    • 蝶番や扉の飾り金具を洗浄し、メッキ直しや色上げを行います。欠損している釘一本までこだわります。

これら7人のプロフェッショナルが連携し、数ヶ月かけて一基のお仏壇を蘇らせるのです。これが「クリーニング」とは次元が違う理由です。


5. 【価格表公開】仏壇修繕の費用目安

「修復が高額なのはわかったけれど、具体的にいくらかかるの?」多くの方が一番気になるのが費用です。
仏壇の大きさや種類(唐木仏壇か金仏壇か)、傷みの度合いによって変動しますが、当店の修繕金額の目安を公開します。

仏壇修繕金額の目安(税込目安)

仏壇サイズ 唐木仏壇(黒檀・紫檀など) 金仏壇(塗り仏壇)
高さ60cmまで 20万円 ~ 40万円 50万円 ~ 130万円
高さ80cmまで 30万円 ~ 60万円 70万円 ~ 160万円
高さ130cmまで 40万円 ~ 100万円 90万円 ~ 180万円
高さ150cmまで 50万円 ~ 130万円 100万円 ~ 220万円
高さ170cmまで 70万円 ~ 170万円 130万円 ~ 300万円
  • ※上記は一般的な幅・奥行を想定しています。特殊な形状や細工によって金額は変動します。
  • ※「唐木仏壇」は木目を活かした仏壇、「金仏壇」は黒塗りに金箔を施した仏壇です。

新品購入と比較した「価値」について

よく「修理するより新品を買ったほうが安いのでは?」と質問されます。結論から言うと、ケースバイケースです。

現在流通している安価な海外製仏壇と比較すれば、修繕の方が高くなることは珍しくありません。修繕は、熟練の職人が一点一点手作業で行うため、製造ラインで作られる新品よりも圧倒的に手間と技術が必要となるからです。

しかし、もし現在のお仏壇と同等の素材・細工のものを「国産の新品」で購入しようとすれば、修繕費用の何倍もの価格になることも多々あります。
何より、先祖代々の想いが込められた「世界に一つだけの仏壇」を残す価値は、金額だけで比較できるものではありません。


6. なぜ「自宅への出張見積もり」が絶対に必要なのか?(建築士の視点)

最近は「写真を送るだけでLINE見積もり」という業者も増えていますが、当店では私(青地)が直接ご自宅に伺うことを強く推奨しており、原則としてそのように対応しています。

なぜなら、仏壇の修理は「仏壇単体」の問題ではなく、「家との調和」の問題でもあるからです。

二級建築士・青地直樹だからできる「設計士との連携」

私(青地)は仏壇店の代表であると同時に、二級建築士の資格も保有しています。

新築やリフォームのタイミングで修繕をご依頼いただく場合、建築士の視点から、新しいお家やリフォーム後のお家の図面を拝見しながら、担当の設計士さんと直接打ち合わせを行います。

具体的には以下のようなポイントを、プロ同士の共通言語ですり合わせます。

  1. 設置場所と動線の確認:
    • 仏壇のサイズ確認はもちろん、扉を開閉するためのスペースや、仏さまをお祀りする日常生活の動作まで想定して、最適な設置状態を検討します。
  2. 細部の納まりの調整:
    • 仏壇を納める仏間の「下がり壁(垂れ壁)」「鴨居」「長押」などの高さが、仏壇のデザインや高さと干渉しないか、バランスは良いかなどを確認します。
  3. 設備面の打ち合わせ:
    • 仏壇内部の灯籠や照明のために、どこにコンセントを配置すべきか、配線をどう隠すかなどを打ち合わせします。

このように建築士同士で図面での会話がスムーズに行えるからこそ出来る、さまざまな事前すり合わせがあります。
写真だけでは分からない「家の構造」や「図面の意図」まで読み解く。それが、失敗しない仏壇修繕の第一歩です。

【ご提案】
いきなりお店に行くのではなく、まずはお電話やフォームから「出張見積もり」をご依頼ください。
代表であり建築士でもある私が、お仏壇の状態と設置環境をプロの目で確かめ、最適なプランをご提案します。
(※お見積もり費用は、修繕ご成約時に全額修理代金からお値引きいたしますので、実質無料となります)
[お仏壇修繕に関するご相談は、新川崎雲山堂へ] 


7. よくある質問(Q&A)ここでは、実際にお客様から寄せられる質問に、Q&A形式でお答えします。

Q. 仏壇はどんなタイミングできれいにすればいいですか?
A. 基本的には、汚れや傷みが気になった時が「その時」です。また、法事(特に13回忌や33回忌など)、お彼岸、お盆といった行事に合わせる方や、ご自宅のリフォーム・新築のタイミングで「家がきれいになるなら、仏様のお家(仏壇)もきれいにしたい」と依頼される方が多いです。

Q. 修理にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 傷み具合や修理内容(クリーニングか完全修復か)によりますが、少なくとも1ヶ月以上はお預かりすることになります。本格的な「お洗濯(完全修復)」の場合、3ヶ月〜4ヶ月ほどお時間をいただくことが多いです。その間、丁寧に工程を進めていきます。

Q. 修理中、位牌や本尊(仏像)はどうすればいいですか?
A. 修理期間中は、ご自宅に「仮祀り(かりまつり)」のスペースを設けていただく場合が多いです。もし仮祀りのスペースが無い場合は、お仏壇をお預かりする際、当店の専門スタッフがご本尊やお位牌を丁寧に梱包し、箱にお詰めします。

Q. 家を建て替える間、仏壇を預かってもらえますか?
A. はい、可能です。家の工事期間は、仏壇の修理期間より長いことがほとんどです。その場合は、修理完了後も当店にて大切に保管し、新居の完成連絡をいただいてから、最適なタイミングでお届けにあがります。

Q. 見積もりをお願いしたいのですが、費用はかかりますか?
A. お仏壇の状態を正確に診断するため、私(青地)が直接お伺いします。その際、ご自宅までの距離に応じた見積り費用を頂戴しております。
ただし、お見積もり後にいずれかの修理プランをご成約いただいた場合、頂戴した見積り費用は修理代金から【全額お値引き】いたします。
したがって、実際に修理を依頼されるお客様にとっては、実質無料となります。これは、冷やかしではなく「真剣に仏壇と向き合いたい」というお客様に、全力で対応させていただくための仕組みです。


8. まとめ:後悔しない選択のために

仏壇の修繕は、単なる「モノの修理」ではありません。ご先祖様への感謝を表し、家族の絆を再確認し、次の世代へと想いをつなぐ一大事業です。

  • 表面的な汚れなら「クリーニング」
  • 次世代へ継承するなら、見えない根っこから直す「完全修復」

この違いを理解した上で、ぜひ信頼できる専門家にご相談ください。

新川崎雲山堂では、お客様の「予算」だけでなく、「想い」や「お住まいの環境」まで考慮したオーダーメイドの修繕をご提案します。
安易に新品に買い替える前に、まずはお手元の仏壇がどれほど価値のあるものか、プロの目で診断させてください。

あなたのご自宅のお仏壇が、新品のような輝きを取り戻し、ご家族皆様が笑顔で手を合わせられる日が来ることを、心より願っております。
[お仏壇修繕に関するご相談は、新川崎雲山堂へ] 


この記事の監修者

株式会社 新川崎雲山堂 体表取締役 青地 直樹

役職: 代表取締役 / 仏師三代目
経歴:
昭和24年創業の仏壇店「雲山堂」をルーツに持つ「新川崎雲山堂」の三代目。祖父、父の背中を見て育ち、幼い頃から仏壇・仏具に触れる。大学では建築学を専攻し、住宅デザインや動線計画を学ぶ。卒業後、家業を継ぎ、仏壇業一筋の道を歩む。経営者として悩んだ経験から「お客様の心に寄り添う」ことを経営理念の中心に据え、日々お客様と向き合っている。
保有資格:

  • 二級建築士
  • 仏事コーディネーター

お客様へのメッセージ:
「お仏壇は、特別なものではなく、日常生活の中に溶け込み、故人と共に暮らすための大切な場所です。私たちは、お客様が心から安らぎ、自然と手を合わせたくなるような、世界に一つだけの祈りの空間を創るお手伝いをさせていただきます。どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。

免責事項:本記事の情報は執筆時点のものです。商品・サービスの仕様や価格、法要の慣習は地域や宗派によって異なる場合があります。

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