なぜ金仏壇は浄土真宗の象徴なのか?阿弥陀如来の極楽浄土を表現する伝統工芸の粋

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なぜ金仏壇は浄土真宗の象徴なのか?阿弥陀如来の極楽浄土を表現する伝統工芸の粋

「なぜ、浄土真宗のお仏壇はあんなにも金色で煌びやかなのでしょうか?」

新川崎雲山堂にお越しになるお客様から、このようなご質問をいただくことがよくあります。他宗派の唐木仏壇(黒檀や紫檀などの木目を生かしたお仏壇)と比べると、その輝きは一際目を引きます。

単に「豪華だから」「高価だから」という理由ではありません。その黄金の輝きには、浄土真宗の教えそのもの(阿弥陀如来様の救いの光と極楽浄土の姿)が込められているのです。

この記事では、私たち新川崎雲山堂が長年、川崎・横浜エリアで浄土真宗のご門徒様とお話しする中で培ってきた知識と経験をもとに、金仏壇の深い意味と、後悔しない選び方について詳しく解説します。


目次

1. 金仏壇とは何か?(浄土真宗における「お内仏」の意味)

まず、「金仏壇」の定義と、浄土真宗においてなぜそれが正式とされるのか、その根本的な理由を紐解きます。

Q. 金仏壇とはどのようなお仏壇ですか?

A. 黒塗りと金箔、錺(かざり)金具で極楽浄土を表現したお仏壇です。

金仏壇(きんぶつだん)とは、ヒノキやマツなどの木地(きじ)の上に「塗り」を施し、金箔や金粉、そして精巧な錺金具(かざりかなぐ)で仕上げられたお仏壇のことです。

かつては「塗り」といえば天然の「漆(うるし)」が主流でしたが、現在は技術の進歩により、多様な塗料が用いられています。

  • 本漆塗り: 伝統的な天然塗料。
  • ウレタン塗り: ピアノの塗装などにも使われる、耐久性と鏡面の美しさを兼ね備えた高級化学塗料。
  • カシュー塗り: 神社仏閣の塗装などでも使われる、漆に近い質感を持つ植物性樹脂塗料。

このように素材は時代とともに進化していますが、その輝きに込められた意味は変わりません。

浄土真宗では、お仏壇のことを親しみを込めて「お内仏(おないぶつ)」と呼ぶことがあります。これには「家庭内における仏堂(お寺)」という意味が込められています。つまり、お仏壇は単なる家具や収納場所ではなく、お寺の本堂をミニチュア化してご家庭にお迎えし、日々の生活の中で阿弥陀様と向き合う神聖な場所なのです。

なぜ「金色」なのか?

浄土真宗のお仏壇が金色である最大の理由は、阿弥陀如来(あみだにょらい)がいらっしゃる「極楽浄土」の世界観を視覚的に表現しているからです。

お経(『仏説阿弥陀経』など)には、極楽浄土が金・銀・瑠璃などの七宝で飾られ、光り輝く世界であると説かれています。金仏壇の輝きは、贅沢を競うものではなく、「阿弥陀様の智慧と慈悲の光があまねく照らしている様子」を私たちに見せてくれているのです。

ポイント:金仏壇は「豪華な装飾品」ではなく、「お浄土の光そのもの」を表現した信仰の形です。


2. 【図解】「お東」と「お西」で全く違う!金仏壇のデザイン比較

「浄土真宗ならどの金仏壇でも同じ」ではありません。
大きく分けて「浄土真宗本願寺派(お西)」「真宗大谷派(お東)」があり、お仏壇の内部デザイン(特に宮殿と呼ばれる屋根部分)に明確な違いがあります。

間違った様式のお仏壇を選ばないよう、以下の違いをしっかりと理解しておきましょう。

宮殿(くうでん)の違い

お仏壇内部の、ご本尊(阿弥陀如来)を安置する屋根付きの場所を「宮殿」と言います。このデザインは、それぞれの本山(お西なら西本願寺、お東なら東本願寺)の御堂を模しています。

特徴 本願寺派(お西) 大谷派(お東)
屋根の形状 一重屋根(ひとえやね)
柿葺き(こけらぶき)を模した繊細な作り。
二重屋根(ふたえやね)
瓦屋根を模した重厚な作り。
柱の装飾 金箔貼りの柱
金色の柱の上に金色の金具がつく。
黒漆塗り(黒塗り)の柱
黒い柱に金色の金具がつき、コントラストがある。
全体の印象 内部全体が黄金一色に見える煌びやかさ。 黒と金色の対比が美しい、引き締まった印象。

選び方の注意点

金仏壇をお選びになる際は、ご自身が「お東」なのか「お西」なのかを、私たち販売員にしっかりとお伝えいただくことが最も大切です。わからない場合は、お寺様のお名前や場所を教えていただければ、こちらでお調べすることも可能です。


3. 金仏壇の最大の価値は「修復して受け継げる」こと

近年、安価な仏壇やモダンな仏壇も増えていますが、伝統的な工法で作られた日本の金仏壇には、他にはない大きな特長があります。それは「お洗濯(修復)」ができるという点です。

Q. 仏壇の「お洗濯」とは何ですか?

A. お仏壇を分解・洗浄し、塗装や金箔を施工し直して新品同様に蘇らせる伝統技法です。

一部で「クリーニング」という言葉が使われることがありますが、金仏壇の「お洗濯」は表面の汚れを落とすだけの簡易なものではありません。本格的な「総塗替え修繕」のことを指します 。

お洗濯(修繕)の流れ

金仏壇は、木地、塗り、金箔、金具など、それぞれの専門職人の技が集結して作られています。「ほぞ組」や「くさび」、あるいは取り外し可能な釘を用いるなど、将来的に分解して修理することを前提とした技法で組み立てられているため、数十年後に分解して修理することができる構造になっているのです。

  1. 分解: お仏壇を部品単位までバラバラにします。
  2. 洗浄: 木地についた長年の煤(すす)や汚れを専用の洗い液で落とします。
  3. 木地修復: 傷んだ木地を補修・交換します。
  4. 下地・塗り: 新たに漆やカシューなどの塗装を施し重ねます。
  5. 金箔押し・金具メッキ: 新しい金箔を押し、金具もメッキ直しや色付けを行います。
  6. 組立: 元通りに組み立てます。

費用とメリットについて

「お洗濯は費用を抑えられる」と思われることがありますが、本格的な修繕の場合、安価な新品を購入するよりも費用がかかるケースがほとんどです。

では、なぜ多くの方がお洗濯を選ばれるのでしょうか?
それは、「ご先祖様が手を合わせてきた場所」という精神的な価値を次世代に残せるからです。5年、10年で買い替える家電とは違い、お仏壇は30年、50年、さらに次の世代へと受け継いでいくものです。

祖父母や両親が大切にしてきたお仏壇が、職人の手によって見違えるように美しくなり、また子や孫の代まで輝き続ける。これこそが、金仏壇を持つ本当の喜びであり、価値なのです。

修繕時の「魂抜き・魂入れ」について
お仏壇の修復や移動の際、「閉眼法要(魂抜き)」や「開眼法要(魂入れ)」を行うかどうかは、地域やお寺様、そしてお客様のお考えによって異なります。行う方と行わない方がいらっしゃいますので、どうするかはお客様自身が決めることです。


4. 浄土真宗のお仏壇に必須の「仏具」と飾り方

お仏壇本体と同じくらい大切なのが、中に飾る「仏具」です。浄土真宗では、ご本尊をお迎えするために特に重要とされる仏具があります。

浄土真宗の基本「三具足」と正式な「五具足」

仏教において仏具の基本となるのが、花瓶(かひん)・香炉(こうろ)・蝋燭立(ろうそくたて)の3種類です。

  • 五具足(ごぐそく)=正式な飾り方
    蝋燭立と花瓶をそれぞれ1対(2つずつ)用意し、中央の香炉と合わせて計5点で飾るのが最も正式な形です。
  • 三具足(みつぐそく)=一般的な飾り方
    お仏壇のスペースの兼ね合いもあり、向かって左に花瓶、中央に香炉、右に蝋燭立を1つずつ置く「三具足」で飾るのが一般的です。

「お東」と「お西」の仏具の違い

お仏壇のデザイン同様、仏具にも宗派による明確な違いがあります。

真宗大谷派(お東)の仏具

  • 色・素材: 金色(真鍮製磨き仕上げ、または金メッキ)。
  • 蝋燭立: 「鶴亀(つるかめ)」と呼ばれるデザイン。亀の背中に鶴が乗り、蓮をくわえた姿をしています。
  • 香炉(線香用): 下記「香炉の使い分け」を参照。

浄土真宗本願寺派(お西)の仏具

  • 色・素材: 黒っぽい茶褐色(宣徳色)。焼き付けや煮色という技法で色付けされます。
  • 蝋燭立: 落ち着いた色合いで、足元は3本脚になっており、鳥の頭が向かい合わせになっているような独特なデザインです。
  • 香炉(線香用): 下記「香炉の使い分け」を参照。

【重要】香炉の使い分けについて

三具足・五具足に含まれる金属製の香炉は、サイズが小さいため、現代では「飾り」として中段に置くことが多くなっています。

実際にお線香を焚く際には、土香炉(どこうろ)と呼ばれる青磁(陶器)の香炉を使用するのが一般的です。この土香炉にも宗派による違いがあります。

  • 本願寺派(お西): 丸みのある形をした「玉香炉(たまこうろ)」を使用します。
  • 真宗大谷派(お東): 透かし模様が入った「透かし香炉(すかしこうろ)」を使用します。

お水やお茶は供えないの?

他宗派ではお水やお茶をお供えしますが、浄土真宗の正式な飾り方では、お水やお茶はお供えしません
これは、「極楽浄土には清らかな八功徳水(はっくどくすい)という水が豊かに湧き出ているため、こちらから差し上げる必要がない」と考えられているからです。

ただし、ご家庭の習慣や、「暑いからお水をあげたい」という優しいお気持ちで供えられることを否定するものではありません。ご自身が一番しっくりくる形(心安らぐ形)で向き合っていただくことが大切です。

[浄土真宗のお仏壇に関するご相談は、新川崎雲山堂へ] 


5. 失敗しない金仏壇選び:ネット通販ではなく「対面」を推奨する理由

現代ではインターネットでお仏壇を購入することも可能になりました。しかし、新川崎雲山堂では、あえてネット通販を行わず、対面販売にこだわり続けています

なぜなら、お仏壇選びで最も大切なのは、スペックや価格の比較ではなく、「お客様の暮らしや心にフィットするかどうか」だからです。

インターネットだけでは分からない「五感」の重要性

お仏壇は、これから毎朝手を合わせ、30年、50年と付き合っていくものです。画面越しの情報だけでは、以下のような「本質的な相性」を確認することができません。

  • 金箔や塗りの質感: 写真では伝わらない、本物の輝きや重厚感、職人の手仕事の跡、深みと光沢のある特有の塗肌と艶。
  • 調和と立体感: 実際の仏壇の中に仏具を並べて初めて分かる「お仏壇と仏具の調和」や、画面では決して分からない奥行きや立体的な配置のバランス。
  • リンの音色: 毎日聞く音が、ご自身の心に安らぎを与える音色かどうか。

これらを五感で感じて選んでいただくことが、購入後の「後悔」や「モヤモヤ」を無くす唯一の方法です。

専門スタッフによる「ヒアリング」と「カスタマイズ」

当店では、お客様のお話をじっくり伺うヒアリングを何より大切にしています。

  • 「猫ちゃんがいるから、火を使わないLEDローソクの方が安全では?」
  • 「マンションのリビングに置くなら、伝統的な金仏壇も素敵ですが、モダンなデザインの中にも浄土真宗らしさを取り入れたカスタマイズもできますよ」
  • 「お部屋のこの位置に、この向きで置くのが生活動線としてもスムーズです」

このように、お客様一人ひとりの生活スタイルや、ご家族を想う気持ちに寄り添い、プロの視点で「ベストな祈りの空間」をご提案します。悲しみの中にいらっしゃるお客様が、細部まで気が回らないのは当然のことです。私たちがその分まで丁寧にサポートさせていただきます。


6. よくあるご質問(FAQ)

浄土真宗のお仏壇選びについて、お客様からよくいただく質問をQ&A形式でまとめました。

Q. マンション住まいです。金仏壇ではなく「モダン仏壇」でも良いですか?

A. はい、問題ありません。大切なのは「お内仏」としての心を整えることです。
近年は住宅事情により、金仏壇を置くスペースがないご家庭も増えています。その場合は、リビングの雰囲気に合う「モダン仏壇(家具調仏壇)」をお選びいただいて構いません。
ただし、仏壇本体がモダンであっても、中のご本尊や仏具の飾り方で「浄土真宗らしさ」を大切にすることをおすすめします。
※なお、「壁掛けタイプ」のモダン仏壇も存在しますが、壁の強度の問題や一般的ではない点から、当店では慎重にご検討いただくようお伝えしております。

Q. ご本尊は「仏像」と「掛軸」どちらが良いですか?

A. 浄土真宗では「掛軸」でお祀りすることが推奨されています。
お仏壇中央のご本尊(阿弥陀如来)は、仏像ではなく掛軸(絵像)をご用意いただくのが正式とされています。
本山(西本願寺・東本願寺)から受ける「免物(めんもつ)」や「授与品」が最も正式ですが、仏壇店で販売されている掛軸でも構いません。迷われた場合は、菩提寺にご相談されることをおすすめします。

Q. 浄土真宗ですが、お位牌を作っても良いのでしょうか?

A. 宗派としては「過去帳」を用いますが、お気持ちで作られる方もいらっしゃいます。
浄土真宗の教義では、亡くなった方はすぐに極楽浄土で仏様に生まれ変わるとされるため、魂が宿るとされる「位牌」は原則として用いません。代わりに、名前や没年月日を記す「過去帳(かこちょう)」「法名軸(ほうみょうじく)」を用います。
しかし、「手を合わせる対象としてお位牌が欲しい」というお気持ちも大切にすべきものです。実際にはお位牌を作られるご門徒様も少なくありません。お寺様によってお考えが異なりますので、一度ご相談されるのが良いでしょう。

Q. 実家の古いお仏壇を処分したいのですが…

A. 「お仏壇の供養処分」として承ります。
引っ越しや継承者の問題で、やむを得ずお仏壇を手放すことを「お仏壇じまい」と呼ぶことがありますが(※商標の関係で、当店では「お仏壇の供養処分」と表現しています)、これには閉眼法要(魂抜き)やお焚き上げなどの手続きが伴います。
これらも「必須」というわけではなく、お客様のお気持ちやお寺様の方針によりますが、粗大ゴミとして捨てるのではなく、最後まで感謝を込めて手放すためのお手伝いをさせていただきます。


まとめ:川崎・横浜で浄土真宗のお仏壇をお探しなら

金仏壇は、単なる高価な工芸品ではありません。それは、阿弥陀如来の光り輝く極楽浄土を、職人の技(塗り、金箔、金具)で現世に表現した、浄土真宗の信仰の証です。

  • お東とお西の違い(仏具や香炉の種類含む)を正しく理解し、
  • お洗濯(修復)によって世代を超えて受け継ぐことができ、
  • 正式な仏具でお飾りすることで、心の拠り所となります。

私たち新川崎雲山堂は、インターネットの画面越しではなく、お客様と直接お会いして、目を見てお話しすることを何よりも大切にしています。
「素材の質感は?」「お仏壇と仏具の立体的な調和は?」「リンの音色は?」
これらを五感で確かめ、心から納得できる「一生もの」の出会いを見つけていただきたいからです。

「初めての仏壇選びで、何から聞けばいいかわからない」
そんな方も、どうぞ安心してお越しください。代表の青地をはじめ、経験豊富なスタッフが、お客様の不安や疑問を一つひとつ解消いたします。

まずはお気軽にご来店、またはお電話でご相談ください。
お客様とご先祖様をつなぐ大切な場所づくりを、私たちが全力でお手伝いさせていただきます。

[浄土真宗のお仏壇に関するご相談は、新川崎雲山堂へ] 


この記事の監修者

株式会社 新川崎雲山堂 体表取締役 青地 直樹

役職: 代表取締役 / 仏師三代目
経歴:
昭和24年創業の仏壇店「雲山堂」をルーツに持つ「新川崎雲山堂」の三代目。祖父、父の背中を見て育ち、幼い頃から仏壇・仏具に触れる。大学では建築学を専攻し、住宅デザインや動線計画を学ぶ。卒業後、家業を継ぎ、仏壇業一筋の道を歩む。経営者として悩んだ経験から「お客様の心に寄り添う」ことを経営理念の中心に据え、日々お客様と向き合っている。
保有資格:

  • 二級建築士
  • 仏事コーディネーター

お客様へのメッセージ:
「お仏壇は、特別なものではなく、日常生活の中に溶け込み、故人と共に暮らすための大切な場所です。私たちは、お客様が心から安らぎ、自然と手を合わせたくなるような、世界に一つだけの祈りの空間を創るお手伝いをさせていただきます。どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。

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